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初めての輸入や輸出で「通関の書類を用意してください」と言われて、何をそろえればいいのか分からない。そんな時は不安になりますよね。
結論から言うと、通関の書類はどの貨物でも要る基本の書類、品目によって増える書類、低い税率を使う時の書類の3層に分けると、ぐっと見通しがよくなります。
この記事を読むと、自分の貨物にどの書類が要るのかを、3層のチェックリストで順番に確かめられるようになります。
通関に必要な書類は「3層」で考えると迷いません
1層目はインボイスなどどの貨物でも要る書類、2層目は食品や化学品など品目によって要る書類、3層目はEPA税率などを使う時の書類です。上の層から順に確かめていくと、抜けが出にくくなります。
『書類の名前がたくさんあって、どれが自分に関係あるのか分からない』という声はよく聞きます。そこで、税関の案内をもとに編集部が3つの層に分けてみました。
| 層 | どんな書類か | 主な書類 | 要る貨物 |
|---|---|---|---|
| 1層目 | 基本の書類 | 仕入書(インボイス)、包装明細書(パッキングリスト)、船荷証券など | ほぼすべての貨物 |
| 2層目 | 品目で増える書類 | 他法令の許可・承認証、食品等輸入届出の書類など | 食品・酒類・化粧品・医薬品などの品目 |
| 3層目 | 低い税率を使う書類 | 原産地証明書、原産品申告書など | EPA税率などを使いたい貨物 |

輸入の書類について、税関の案内(カスタムスアンサー1107)では、仕入書・包装明細書・船荷証券などに加えて、「貨物により他法令の許可・承認証、特恵原産地証明書、減免税明細書」が要ると書かれています。まさにこの3層の形なんです。
輸入の手続全体の流れは輸入通関の流れで見ています。
1層目:どの貨物でも要る基本の書類
まずは、ほぼすべての貨物で用意する書類です。ここがそろっていないと、2層目や3層目を確かめる前に手続が止まってしまいます。
輸入で用意する基本の書類
| 書類 | 英語での呼び方の例 | 何が書いてあるか | 通関で使われる場面 |
|---|---|---|---|
| 仕入書 | インボイス(Invoice) | 売手・買手、品名、数量、単価、合計額、取引条件 | 品名や課税価格を確かめる |
| 包装明細書 | パッキングリスト(Packing List) | 梱包ごとの中身、個数、重さ、大きさ | 検査や貨物の確認に使う |
| 船荷証券・海上運送状 | B/L など | 船で運ぶ契約の内容 | 船で運ぶ貨物の確認 |
| 航空貨物運送状 | AWB など | 飛行機で運ぶ契約の内容 | 飛行機で運ぶ貨物の確認 |
| 運賃明細書・保険料明細書 | Freight / Insurance の明細 | 運賃や保険料の額 | 課税価格の計算 |
| 契約書・価格表 | Contract / Price List | 取引の条件や価格の根拠 | 必要に応じて価格を確かめる |
中でも一番大事なのが仕入書(インボイス)です。品名や数量、価格がここに書かれていて、関税や消費税の計算の出発点になるからです。
『インボイスとパッキングリストって、何が違うの?』と迷う方も多いはずです。インボイスはお金の話(何をいくらで売ったか)、パッキングリストは荷物の話(どの箱に何がいくつ入っているか)と考えると分かりやすいですよ。
- 仕入書の品名が、何の物か分かる具体的な書き方になっている
- 仕入書とパッキングリストの数量や個数が合っている
- 船荷証券や航空貨物運送状の個数・重さと、貨物が合っている
- 取引条件と、運賃・保険料が価格に入っているかが分かる
- 運賃や保険料の明細を、課税価格の計算のために手元にそろえた
インボイスの品名は「何の物か」が分かるように
通関の書類でよくつまずくのが、インボイスの品名の書き方です。品名がざっくりしすぎていると、税関で何の物か分からず、問い合わせや確認で時間がかかることがあります。
| 分かりにくい書き方の例 | 分かりやすい書き方の例 |
|---|---|
| 部品 | 自転車用のブレーキ部品(金属製) |
| サンプル | 化粧品の見本(ハンドクリーム) |
| 雑貨 | 陶磁器製のマグカップ |
| 衣類 | 綿のTシャツ(ニット製) |
ポイントは、何に使う物か、何でできているかが分かることです。例えば衣類なら、編物製(ニット)かどうかで少額免税の扱いが変わることもあるので、素材や作りまで書いてもらうと安心です。
『売手が作る書類だから、こちらは口を出せない』と思いがちですよね。でも、出荷前に「品名はこう書いてほしい」と伝えておくのは、輸入する側ができる一番の先回りなんです。
少額の貨物なら、書類が簡単になることもあります
品目ごとの課税価格が20万円以下である場合は、航空貨物運送状や仕入書を輸入申告書の代わりに使える扱いがあります(カスタムスアンサー1003)。
また、輸入申告書の品名欄の各欄の課税価格が20万円以下のものは、「少額貨物簡易通関扱」として記載の一部を省ける仕組みもあります(カスタムスアンサー1002)。
輸出で用意する基本の書類
輸出の場合は、輸出申告書と「仕入書又は仕入書に代わる書類」が基本です(カスタムスアンサー5009)。場合によって、包装明細書や他法令の許可・承認証なども要ります。
輸出の書類は、相手の国の輸入通関でも使われます。品名や原産国、数量は、相手国の手続でもそのまま通じるように具体的に書いておきましょう。輸出の流れは輸出通関の流れで見ています。
輸出取引に当たる販売なら消費税が免除され、その証明として輸出許可書などを納税地などに7年間保存する必要があります(国税庁タックスアンサーNo.6551)。申告が終わった後も、書類は捨てずにまとめて保管しておきましょう。
2層目:品目によって増える書類(他法令・SDS)
食品や化粧品、化学品などは、関税法とは別の法律で許可や届出が要ることがあります。通関の現場では、こうした法律を「他法令」と呼んでいます。
他法令の許可や承認などが要る貨物は、それを受けて税関に証明しないと輸入が許可されません。貨物が着いてから気づくと、その間ずっと保税地域で待つことになります。
税関の案内(カスタムスアンサー1801)では、税関は他法令に当たるかどうかの照会には答えられない、とされています。どの法律に関わるかは、それぞれの所管の役所に確かめる必要があります。
品目ごとに増える書類の例
税関や厚生労働省の公開情報から、よく出てくる品目の例をまとめました。
| 品目 | 増える手続や書類 | どこで手続するか |
|---|---|---|
| 販売や営業で使う食品・添加物・器具など | 食品等輸入届出書(届出済の書類を税関に出す) | 検疫所 |
| 販売目的や飲食店で出す酒類 | 食品等輸入届出書、販売するなら酒類の販売業免許 | 検疫所、税務署 |
| 業として輸入する化粧品・医薬品など | 製造販売業の許可証の写し、承認書などの写し | 厚生労働省の許可を受けた事業者 |
| 個人で使う化粧品で、決められた数を超える場合 | 輸入確認証 | 地方厚生局 |
食品の場合、厚生労働省は「輸入届出を行わない食品等については、販売又は営業上使用することはできません」と案内しています(厚生労働省 食品等輸入手続)。量や送り方で扱いが変わるものではない、とも書かれています。
酒類の手続はワインの輸入通関で、他法令の調べ方は他法令と通関でくわしく見ています。
MSDS(SDS)は通関とどう関係する?
化学品を扱っていると、「MSDSを出してください」と言われることがありますよね。通関の場面でもMSDSという呼び方をよく見かけます。
厚生労働省の職場のあんぜんサイトでは、SDSを「安全データシート(Safety Data Sheet)の略語」と説明しています(職場のあんぜんサイト)。化学物質やそれを含む混合物を渡す時に、性質や危険性、取扱いの情報を相手に伝えるための文書です。
SDSは、労働安全衛生法や毒物及び劇物取締法、化管法といった国内の法律で決められている文書です。もともとは化学物質を渡す相手に情報を伝えるためのもので、税関に出すための書類として作られたものではありません。
それでも通関の場面でSDSを求められるとしたら、貨物の中身を確かめたい時だと考えられます。例えば品目の分類を決めたり、他法令に当たる物質が入っていないかを確かめたりする時に、成分の情報が役立つからです。
『どうして求められたのか分からない』という時は、何の確認のために要るのかを、依頼している通関業者に聞いてみてください。理由が分かれば、SDSのどの部分を見せればいいのかも見えてきます。
- 食品・酒類・化粧品・医薬品・化学品に当たらないか確かめた
- 当たる場合、どの法律のどんな手続が要るかを所管の役所に確かめた
- 届出や許可の書類を、貨物が着く前にそろえた
- 化学品なら、成分が分かるSDSを売手から取り寄せた
3層目:EPA税率を使う時の書類(原産地の証明)
日本は多くの国とEPA(経済連携協定)を結んでいて、協定の原産品なら低い税率を使える場合があります。そのために必要なのが、原産地を証明する書類です。
税関の案内(カスタムスアンサー1524)では、輸出国が発給した原産地証明書、認定輸出者が作成した原産地申告、輸入者・輸出者・生産者が作成した原産品申告書のいずれかを、原則として輸入申告の時に出すとされています。
| 証明の種類 | 誰が作るか | 使える協定の例(税関の資料より) |
|---|---|---|
| 第三者証明(原産地証明書) | 輸出国の発給機関が発給する | CPTPP・日EU・日英・日米貿易協定を除くすべてのEPA |
| 認定輸出者制度(原産地申告) | 認定を受けた輸出者 | 日メキシコ、日スイス、日ペルー、RCEP |
| 自己申告制度(原産品申告書) | 輸入者、輸出者または生産者 | 日豪、CPTPP、日EU、日英など |
原産地証明書などの有効期間は、発給や作成の日から1年です。また、課税価格の総額が20万円以下の貨物は、原産地証明書などを出す必要はありません。

『低い税率が使えるなら、毎回使えばいいのでは?』と思いますよね。ただ、証明書類をそろえる手間もかかるので、どのくらい税額が変わるのかと比べて決めるのがおすすめです。
自己申告の時に一緒に要る書類
自己申告制度を使う時は、原産品申告書に加えて、協定上の原産品であることを明らかにする書類(原産品申告明細書と関係書類)が要ります(カスタムスアンサー1527)。
第三国を経由して運ぶ場合は、EPA締約国からの通し船荷証券などが必要になることもあります。手続の細かい流れはEPAと通関で見ています。
- 使いたい協定と、その協定で使える証明の種類を確かめた
- 原産地の証明書類の作成日から1年以内に申告できる
- 自己申告なら、原産品であることを示す明細書と関係書類をそろえた
- 第三国を経由する場合、通し船荷証券などを用意した
通関の書類でよくある相談に答えます
ここでは、ネットのQ&Aサイトで閲覧の多かった書類の相談を要約し、公的機関の公開情報をもとに答えます。
- 洗剤を輸出したら、メーカーからMSDS(SDS)を求められた
- 海外から買ったグリースが、MSDSがないという理由で止められた
- 化学品の塗料を輸入しようとしたら、追加の書類が要ると言われた
洗剤を輸出するのに、MSDSを求められた
洗剤のような化学品を扱う時、SDSのやりとりは珍しくありません。SDSは、化学物質を渡す相手に性質や危険性、取扱いの情報を伝える文書だからです。
輸出の場合は、送る先の国の決まりや運送の都合で求められることもあります。誰が、何のために求めているのかを確かめて、メーカーに用意してもらいましょう。
MSDSがないという理由で、通関で止められた
『個人で買っただけなのに、どうして?』と戸惑いますよね。この場合も、貨物の中身を確かめるために成分の情報が求められている可能性があります。
まずは連絡をくれた宅配便の事業者や通関業者に、何の確認のためにSDSが要るのかを聞いてみてください。販売者にSDSを出してもらえるかを相談するのも一つの方法です。
化学品の輸入で、追加の書類が要ると言われた
塗料のような化学品は、成分によって他の法律の手続が関わることがあります。税関は他法令に当たるかどうかの照会には答えられないので、所管の役所に確かめるのが基本です。
見積もりをとった事業者に、どの法律のどんな書類が要るのかを具体的に聞いてみましょう。SDSがあれば成分が分かるので、確認が進みやすくなります。
書類づくりに迷ったら、通関業者に相談を
ここまで見てきたように、通関の書類は貨物によって大きく変わります。初めての品目や、他法令が関わりそうな品目なら、早めに通関業者に相談するのが安心です。
- 1層目の基本の書類を、売手と一緒にそろえる
- 2層目の品目で増える書類がないか、所管の役所や通関業者に確かめる
- 3層目の原産地の証明を使うかどうか決めて、書類を取り寄せる
- 全部の書類の数量・品名・価格が合っているか、最後に照らし合わせる
書類をそろえる時は、紙でも電子データでも、同じ貨物の書類を1つのフォルダにまとめておくと便利です。税関や通関業者から問い合わせが来た時に、すぐ答えられるからです。
通関業者に頼む時に確かめたいことは、通関業者とは?でまとめています。
書類を読み解く力を仕事にするなら
インボイスや原産地の証明を読み解いて申告書にまとめるのは、通関の仕事の中心です。通関の知識を仕事にしたい人には、国家資格の通関士という道があります。
第60回(令和8年)の通関士試験では、通関実務の科目で輸出申告と輸入申告の書類を作る問題が出されました。仕事の中身は通関士とは?で詳しく見られます。
通関ドットコム
通関士を目指すなら、講座を比べてみませんか
実務の申告書問題や計算問題の解説、法改正への対応など、独学では用意しにくい部分だけでも講座を使うと準備が進めやすくなります。学び方の比べ方と、資料請求で講座を選ぶ時のチェックポイントをまとめました。
講座の選び方通関士の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。講座の内容・料金・受講期間は各講座の公式案内でご確認ください。
よくある質問
通関で一番大事な書類は何ですか?
仕入書(インボイス)です。品名・数量・価格・取引条件が書かれていて、品目の確認や課税価格の計算の出発点になります。
インボイスとパッキングリストの違いは何ですか?
インボイスは何をいくらで売ったかを示す取引の書類で、パッキングリストはどの梱包に何がいくつ入っているかを示す書類です。両方の数量や個数が合っているかを確かめておきましょう。
MSDSとSDSは同じものですか?
厚生労働省の用語説明では、SDSは安全データシートの略語とされています。通関の場面ではMSDSという呼び方も見かけるので、求められた時は相手が何のために必要としているかを確かめましょう。
原産地証明書はいつまで使えますか?
原産地証明書などの有効期間は、発給や作成の日から1年です。課税価格の総額が20万円以下の貨物なら、提出は必要ありません。
通関の書類は誰が用意しますか?
インボイスやパッキングリストは、多くの場合、売手(輸出者)が作って買手に送ります。他法令の届出や許可の書類は輸入する側が用意するのが基本なので、品目が決まったら早めに確かめておきましょう。
まとめ
- 通関の書類は、基本・品目で増える・低い税率を使う、の3層で考える
- 1層目のインボイスは、品名の確認と課税価格の計算の出発点
- 2層目の他法令の書類は、貨物が着く前にそろえる
- MSDS(SDS)を求められたら、何の確認のためかを聞く
- 3層目の原産地の証明は、協定ごとに種類と有効期間を確かめる





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