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通関士の資格を取った、あるいはこれから取ろうとしていて、『この資格で、どんな働き方ができるんだろう』と考えている方も多いですよね。
結論から言うと、通関士のキャリアは「通関業者で専門を深める」だけではありません。
物流や商社、外資系企業など、輸出入に関わる職場で知識を活かす道があります。
この記事では、4つの職場ごとに資格の使われ方と、次に身につけたい知識を並べて比べました。
通関士の資格は、どんな職場で活きる?
通関士として記名して働けるのは通関業者に勤める場合ですが、通関の知識そのものは、物流会社やメーカー、商社、外資系企業の輸出入の仕事でも役立ちます。「資格を使う職場」と「知識を使う職場」の2つで考えると、キャリアの選択肢が見えやすくなります。
税関の案内では、通関士は「勤務先の通関業者の申請に基づく財務大臣の確認を受け、通関業務に従事する者」とされています(カスタムスアンサー8001)。
通関業法では、通関業者は営業所ごとに通関士を置き、申告書などの内容を通関士に審査させて記名させることになっています。
数字で見る通関士の働く場
税関が公表している数字を見ると、通関の仕事の広がりがつかめます。
| 項目 | 数 | 出典 |
|---|---|---|
| 通関業者 | 988社(令和7年4月1日現在) | カスタムスアンサー9104 |
| 通関業務を行う営業所 | 2,042か所(同) | 同上 |
| 通関士 | 8,372人(令和8年4月1日現在) | カスタムスアンサー8101 |
| 通関士以外の通関業務従業者 | 8,573人(同) | 同上 |
通関業務に携わる人は合計16,945人で、そのうち通関士は半分ほどです。
『通関士の資格がなくても、通関の現場で働いている人がこんなにいるんだ』と驚いた方もいるかもしれませんね。
資格を持っていると、この現場の中で書類の審査と記名を任される立場になれるんです。
資格の役割そのものは通関士とは?で詳しく見ています。
職場別:資格の使われ方と次に身につけたい知識
ここが大事なところです。
通関ドットコム編集部で、通関士の知識が活きる職場を4つに分け、「資格の使われ方」と「次に身につけたい知識」を並べました。
| 職場 | 資格・知識の使われ方 | 次に身につけたい知識 |
|---|---|---|
| 通関業者 | 通関士として申告書類を審査し、記名する | 扱う品目の幅、他の法律の手続、EPAの原産地の手続 |
| 物流(フォワーダー・倉庫) | 輸送の手配や保税の倉庫の管理で、通関の流れを踏まえて段取りする | 保税地域と保税運送の決まり、インコタームズ |
| メーカーや商社 | 通関業者に頼む側として、書類を準備し、税関の手続を社内に説明する | 輸出の規制、EPAの活用、社内の手順づくり |
| 外資系企業 | 海外の本社や拠点と日本の手続をつなぐ | 英語での説明、AEOなどの制度、社内の管理体制 |

通関業者:資格をそのまま使う職場
通関業者では、通関士として申告書類の内容を審査し、記名します。
扱う品目や国が広がるほど、他の法律の許可や届出が要る貨物にも出会います。
例えば、食品を販売目的で輸入する時は、検疫所への届出が要ります(カスタムスアンサー1802)。
こうした手続を一つずつ覚えていくことが、専門を深めることにつながります。
経験を積むと、後輩が作った書類を確かめたり、荷主からの難しい相談に答えたりする役割も増えていきます。
物流:貨物の流れ全体を見る職場
フォワーダーや倉庫の会社では、貨物を運ぶ・預かる流れの中に通関があります。
外国貨物は、原則として保税地域以外の場所に置くことができません(カスタムスアンサー9203)。
保税地域や保税運送の決まりを知っていると、輸送の段取りに無駄が出にくくなります。
「この貨物は保税のまま別の倉庫へ運べますか」と聞かれた時に、すぐ答えの方向が分かる人は現場で頼りにされます。
メーカーや商社:頼む側として通関に関わる職場
メーカーや商社では、通関業者に通関を頼み、そのための書類をそろえます。
通関業者が何を確認するかを知っていると、書類の不備に先回りして気づけます。
EPAの特恵税率を使う時の原産地の手続なども、社内で担当することがあります(カスタムスアンサー1524)。
EPAの使い方はEPAと通関で詳しく見ています。
外資系企業:日本の手続を海外につなぐ職場
外資系企業の貿易部門では、海外の本社や拠点と、日本の手続について話し合います。
「日本ではこの書類が要る」と説明し、社内の手順に落とし込むのが大切な役割です。
新しい国からの輸入や、新しい商品の取り扱いが始まる時に、最初に相談される立場になることもあります。
通関業者とのやり取りの窓口になるので、通関業者の側で働いた経験があると話が早く進みますよ。
英語で説明する力が求められる場面については通関士に英語は必要?で詳しく見ています。
キャリアの3つの方向:深める・広げる・移る
『4つの職場は分かったけど、自分はどう進めばいいの?』と迷う方もいるはずです。
通関士のキャリアは、大きく3つの方向で考えると分かりやすくなります。
| 方向 | どんな道か | 合う人 |
|---|---|---|
| 深める | 通関業者で扱う品目や手続を広げ、専門性を高める | 書類の審査そのものにやりがいを感じる人 |
| 広げる | 物流の会社で、輸送や保管も含めた貨物の流れ全体を担う | 段取りを組んで全体を動かすのが好きな人 |
| 移る | メーカーや商社、外資系企業で、頼む側として輸出入を担う | 社内外の人と調整し、仕組みを作るのが好きな人 |

深める:通関業者で専門性を高める
深める道では、扱う品目の幅を広げ、他の法律の手続やEPAなど、難しい案件を任されるようになることが目標になります。
認定通関業者で働けば、AEO制度の特例を使った申告に関わることもあります。
AEO制度は、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整った事業者を税関が承認・認定する制度です(AEO制度)。
制度の種類はAEO制度とは?でまとめています。
広げる:物流全体を見られる人になる
広げる道では、通関だけでなく、輸送や保管の手配まで含めて貨物の流れを考えられるようになります。
荷主から見ると、「通関のことも輸送のことも分かる担当者」は心強い存在です。
インコタームズの取引条件を知っておくと、どこまでが売り手の手配かを判断しやすくなります(ジェトロ「インコタームズ2020」)。
移る:頼む側で仕組みを作る
移る道では、メーカーや商社、外資系企業に移り、輸出入の仕組みを社内で整える役割を担います。
例えばこんな場面です。
「新しい国から部品を輸入したいんだけど、何を準備すればいい?」
「まず品目に他の法律の手続が要るかを調べて、通関業者に必要な書類を確かめておきます」
通関の流れを知っているからこそ、社内の相談にすぐ答えられるんです!
- 書類の正しさを突き詰める作業が好きなら、深める
- 船や飛行機、倉庫の段取りに興味があるなら、広げる
- 社内の人や海外の担当者と話して仕組みを作りたいなら、移る
- 迷うなら、今の職場で3つのうちどの仕事が一番楽しいかを振り返る
方向を変える時に見直したいこと
方向を変える時は、今の経験のうち何がそのまま生きて、何が足りないかを書き出しておくと安心です。
| 今の職場から次の職場へ | そのまま生きる経験 | 足りなくなりやすい知識 |
|---|---|---|
| 通関業者からメーカーや商社へ | 書類の不備に気づく目、税関の手続の知識 | 社内の他の部署との調整、取引の条件 |
| 通関業者から物流の会社へ | 申告から許可までの流れ | 輸送の手配、保税の倉庫の管理 |
| 物流の会社から通関業者へ | 貨物の動きと書類の受け渡し | 申告の中身を決める法律の知識 |
| メーカーや商社から外資系へ | 輸出入の仕組みを社内で回した経験 | 英語での説明、海外の拠点との調整 |
『足りない知識があるなら、まだ動けないかも』と思う必要はありません。
足りない部分を自分で言葉にできていれば、面接でも「入社後にこう補います」と前向きに話せます。
資格と組み合わせたい知識
通関士の資格は、他の知識と組み合わせることで、活かせる場面がさらに広がります。
| 組み合わせる知識 | 活きる場面 | 学び方の入口 |
|---|---|---|
| 英語 | インボイスの読み取り、海外とのやり取り | 書類の項目名から覚える |
| 貿易実務の知識 | 輸出入の手配や、取引で使う書類の作成 | 貿易実務検定(民間検定)の範囲を参考にする |
| EPAと原産地の手続 | 関税を下げる特恵税率の活用 | 税関の原産地規則ポータルを読む |
| 輸出の規制 | 輸出の許可が要る貨物の判断 | 外為法の輸出規制の仕組みを押さえる |
| AEO制度 | 社内の管理体制づくり | 税関のAEO制度のページを読む |
通関士と貿易実務検定の違いは通関士と貿易実務検定の違いで、輸出の規制は輸出できない物と許可が要る物で詳しく見ています。
学ぶ順番の一例
『全部を一度に学ぶのは無理』という方は、次の順番を目安にしてみてください。
- 今の仕事で一番よく出てくる書類の英語を覚える
- 扱う品目に関わる、他の法律の手続を調べる
- EPAの原産地の手続や、輸出の規制の仕組みを押さえる
- 次に目指す職場で求められる知識を、求人票から拾い出す
貿易実務検定や通関ビジネス実務検定は、日本貿易実務検定協会が実施する民間の検定で、国家資格ではありません。通関士とは目的が違うので、自分のキャリアの方向に合わせて選んでみてください。
資格を増やすことが目的になってしまい、仕事で使う場面が見えないまま勉強を続けてしまうケースがあります。「次の職場でどの場面に使うか」を決めてから選ぶと、学んだことが無駄になりにくいです。
これから資格を取る人のキャリアの考え方
まだ通関士試験に合格していない方は、合格後にどの職場を目指すかを先にイメージしておくと、勉強の目的がはっきりします。
通関士試験は、通関業法、関税法等、通関実務の3科目で行われ、3科目すべてで合格基準を満たす必要があります(税関「通関士試験」)。
合格率は財務省(税関)の公表値で、第59回(令和7年)が15.1%でした。
| 今の立場 | キャリアの描き方の例 |
|---|---|
| 通関業者で働いている | 合格して通関士の確認を受け、審査と記名の仕事に進む |
| 物流の会社で働いている | 合格を足がかりに、通関部門や輸出入の手配の仕事へ広げる |
| メーカーや商社で働いている | 頼む側として、社内の輸出入の仕組みを整える役割を目指す |
| 異業種で働いている | まず合格し、通関業者や物流の会社の入口の仕事から入る |
通関業者の通関業務などに通算5年以上携わると通関実務の科目が、通算15年以上だと関税法等と通関実務の2科目が免除されます(カスタムスアンサー8009)。現場で働きながら合格を目指す人は、この仕組みも覚えておきましょう。
合格から通関士として働くまで
第60回(令和8年)の試験は10月4日に行われ、合格発表は11月10日の予定です。
合格した後、通関士として働くまでには次の段階があります。
- 税関のホームページで合格者の受験番号を確かめる
- 受験地を管轄する税関から送られる合格証書を受け取る
- 通関業者に勤める(すでに勤めている人はそのまま)
- 勤務先の通関業者が財務大臣に届け出て、確認を受ける
- 通関士として、書類の審査と記名の仕事を始める
確認の手続については通関士になるまでで詳しく見ています。
独学で進めるか、講座を使うか
キャリアの方向が決まったら、次は合格までの進め方を考えておきましょう。
市販のテキストと問題集で独学する人もいて、自分のペースで費用を抑えて進められるのは独学のよさです。
一方で、次のような場面では講座が役立つことがあります。
- 通関実務の申告書や計算問題を、実務の流れから解説してほしい
- 法改正の情報を自分で追いかけるのが大変
- 仕事が忙しく、勉強時間が限られる
- 分からないところを質問できる相手がいない
独学の進め方は通関士は独学で合格できる?、講座の比べ方は通関士の講座・スクールの選び方にまとめました。
通関ドットコム
通関士を目指すなら、講座を比べてみませんか
実務の申告書問題や計算問題の解説、法改正への対応など、独学では用意しにくい部分だけでも講座を使うと準備が進めやすくなります。学び方の比べ方と、資料請求で講座を選ぶ時のチェックポイントをまとめました。
講座の選び方通関士の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。講座の内容・料金・受講期間は各講座の公式案内でご確認ください。
すでに合格していて職場を変えたい方は、ルート別の求人の探し方を通関士の転職・求人の探し方で比べてみてください。
よくある相談:通関士のキャリアQ&A
通関士のキャリアについて、よく見かける相談を3つ取り上げます。
相談1:通関士になる気はないけれど、貿易業界なら取っておくべき?
『通関士として働く予定はないけど、キャリアのために取る意味はある?』という相談です。
通関の知識は、メーカーや商社など頼む側の仕事でも役立ちます。
ただ、勉強には時間がかかるので、今の仕事で通関の書類にどれくらい触れるかを考えてから決めるとよいでしょう。
相談2:運送会社の国際部門と、別の職種で迷っている
『内定先の国際部門に進むか、まったく別の仕事にするか』という相談もあります。
どちらにも、それぞれのよさがあります。
国際部門に進むなら、貨物の流れを覚えながら通関士を目指せる環境かどうかを、入社前に聞いてみてください。
「通関の部署に配属される可能性はありますか」「資格の勉強を支える仕組みはありますか」と聞くだけでも、入社後のイメージはかなり具体的になります。
相談3:通関士の資格は、海外では役に立たない?
『英語の試験と組み合わせると相乗効果はある?海外では使えない?』という声です。
通関士は日本の法律に基づく資格なので、そのまま海外の制度で使えるものではありません。
ただ、日本への輸出入を扱う外資系企業や海外拠点では、日本の手続が分かる人が頼りにされます。
英語の力と組み合わせると、日本と海外をつなぐ役割が担いやすくなりますよ!
相談4:まったくの異業種から、資格を取って転職できる?
『これまで貿易とは関係のない仕事をしてきた』という相談もよく見かけます。
通関士試験は経歴を問わず誰でも受けられるので、異業種からの挑戦もできます。
その場合は、まず通関業者や物流の会社の入口の仕事から入り、経験を積みながら方向を考えていく道が現実的です。
未経験からの順番は通関士は未経験からなれる?で詳しく見ています。
よくある質問
通関士のキャリアには、どんな道がありますか?
通関業者で専門を深める道、物流の会社で貨物の流れ全体を担う道、メーカーや商社、外資系企業で頼む側として輸出入を担う道があります。
通関士の資格は、通関業者以外でも役立ちますか?
役立ちます。通関士として記名するのは通関業者に勤める場合ですが、通関の流れや書類の知識は、物流会社やメーカーの輸出入の仕事でも使えます。
通関士と組み合わせるとよい知識は何ですか?
英語、貿易実務、EPAと原産地の手続、輸出の規制、AEO制度などです。次に目指す職場で使う場面から選ぶのがおすすめです。
通関士はどれくらいいますか?
税関の案内では、令和8年4月1日現在で全国の通関士は8,372人、通関士以外の通関業務従業者と合わせて16,945人です。
キャリアの方向は、いつ決めればいいですか?
早く決める必要はありません。まずは今の職場で3つの方向のどの仕事が楽しいかを確かめ、合格や経験の節目に見直していくのがおすすめです。
まとめ
- 通関士の知識は、通関業者・物流・メーカーや商社・外資系の4つの職場で活きる
- キャリアは「深める」「広げる」「移る」の3つの方向で考える
- 英語、貿易実務、EPA、輸出の規制、AEOなどと組み合わせると活かせる場面が広がる
- これから資格を取る人は、合格後に目指す職場を先にイメージしておく





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