保税と通関|保税地域・保税倉庫で何ができるのか

保税と通関の関係と、保税倉庫でできることを扱う記事のアイキャッチ

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荷物の追跡に「保税運送中」と出たり、港や空港の近くで「保税蔵置場」という看板を見かけたりして、保税って何だろうと思った方は多いですよね。

結論から言うと、保税とは、関税などを納める前の外国貨物を、税関の目の届く決まった場所に置いたり運んだりできる仕組みです。通関は、この保税の場所にある貨物について行われます。

この記事を読むと、保税地域の5種類と、保税倉庫で通関がどう進むのかが分かります。

目次

保税とは?関税を払う前の貨物を置いておける仕組み

先に結論

保税制度は「外国貨物について、蔵置、加工・製造、展示、運送等を可能とする制度」で、大きく「保税地域制度」と「保税運送制度」の2つに分かれます(カスタムスアンサー9203)。輸入の許可が出るまで、貨物は外国貨物のまま保税地域にいます。

税関の案内はカスタムスアンサー9203で読めます。

ここで出てくる「外国貨物」は、関税法で意味が決まっている言葉です。

外国貨物と内国貨物の違い

関税法第2条では、2つの貨物を次のように分けています。

言葉関税法第2条の意味例えばこんな貨物
外国貨物輸出の許可を受けた貨物、外国から着いた貨物で輸入が許可される前のもの港に着いて輸入申告を待っている貨物、輸出の許可が出て船を待つ貨物
内国貨物日本にある貨物で外国貨物でないもの輸入の許可を受けて国内に引き取った貨物、まだ輸出の許可を受けていない国産品

『輸出の許可を受けた国産品も外国貨物なの?』と驚く方もいるかもしれません。

そうなんです。輸出の許可が出た時点で、その貨物は外国貨物として扱われます。

貨物の段階ごとに見る「いま外国貨物か」

輸出入の貨物は、手続の段階によって外国貨物と内国貨物を行き来します。

段階ごとに並べると、保税の場所にいるべき貨物が見えてきます。

貨物の段階扱いいる場所の目安
外国から港や空港に着いたばかり外国貨物指定保税地域など
輸入申告をして審査や検査を待っている外国貨物保税地域
輸入の許可を受けて引き取った内国貨物自社の倉庫や販売先
輸出のために港へ運び入れた内国貨物保税地域
輸出の許可を受けて船を待っている外国貨物保税地域

外国貨物の間は、保税の場所で管理される、と覚えておくと迷いにくくなります。

外国貨物はどこにでも置けるわけではない

関税法第30条第1項には「外国貨物は、保税地域以外の場所に置くことができない」とあります。

つまり、税関の手続が終わっていない貨物は、決まった場所で管理される決まりです。

例外もある

難破した貨物や、税関長が期間と場所を決めて許可した貨物(他所蔵置)など、保税地域の外に置ける例外もあります。普段の輸出入の貨物は、保税地域に置かれると考えておきましょう。

保税地域の5種類|置ける期間・できる作業・使う場面

保税地域には、役割の違う5つの種類があります。

通関ドットコム編集部で、税関の表をもとに「どれくらい置けるか」「何ができるか」「どんな時に使うか」を1枚にまとめました。

種類置ける期間できる作業使う場面の例
指定保税地域1か月外国貨物の積卸、運搬、一時蔵置港や空港で、着いた貨物をいったん置いて通関を待つ
保税蔵置場2年(延長可能)積卸、運搬、長期蔵置輸入の時期を見ながら、税を納める前の貨物を倉庫で保管する
保税工場2年(延長可能)外国貨物を原料とする加工・製造輸入した原料を外国貨物のまま加工する
保税展示場税関長が指定する期間外国貨物の展示・使用国際的な展示会で、外国の出品物を並べる
総合保税地域2年(延長可能)積卸、運搬、長期蔵置、加工・製造、展示保管から加工、展示までを1か所でまとめて行う

表を見ると、置ける期間と作業の幅がずいぶん違いますよね。

関税を払う前の貨物がどこにいるかは、この5つのどれかだと考えると分かりやすくなります。

保税地域の5種類を、置ける期間・できる作業・使う場面で並べた図解

「保税倉庫」はどれのこと?

『保税倉庫という言葉は、表にないけど?』と思った方もいるはずです。

実は、関税法の保税地域の種類の名前に「保税倉庫」はありません。

外国貨物を倉庫で長く置いておける場所は、法令上は保税蔵置場です。

通関の現場で「通関倉庫」や「保税倉庫」と呼ばれる場所が、どの種類の保税地域なのかは、倉庫の運営者に確かめるのが確実です。

指定と許可、2つの決まり方

保税地域は、決まり方も種類によって違います。

カスタムスアンサー9203では、指定保税地域は「財務大臣が指定」、保税蔵置場は「税関長が許可する」と説明されています。

指定保税地域
  • 財務大臣が指定する
  • 置ける期間は1か月
  • 着いた貨物の一時的な置き場所
保税蔵置場
  • 税関長が許可する
  • 置ける期間は2年(延長可能)
  • 長く保管する倉庫として使う

倉庫の事業者がAEOの特定保税承認者になると、届出で保税蔵置場などとして使えるようになります。

詳しくはAEO制度とは?で紹介しています。

倉庫に相談する時に聞いておきたいこと

保税倉庫を使う時は、最初に確認しておくと後で慌てずに済むことがあります。

保税倉庫の担当者に聞いておきたいこと
  • その倉庫が保税地域のどの種類に当たるか
  • 外国貨物をどれくらいの期間置ける予定か
  • 3か月を超えて置く時の蔵入承認を誰が申請するか
  • 貨物の仕分けや検品など、置いている間にできる作業は何か
  • 通関を頼む通関業者とのやりとりの窓口は誰か

輸入の時、貨物は保税倉庫でどう動く?

輸入の貨物は、日本に着いてから輸入の許可が出るまで、保税地域で待っています。

税関のカスタムスアンサー1102では、外国貨物は「輸入手続が終了するまでの間保税地域に搬入されます」と案内されています。

輸入の貨物が保税地域で動く流れ
  1. 船や飛行機で着いた貨物が、保税地域に入る
  2. 運送会社などから到着通知が届く
  3. 保税地域を管轄する税関に輸入申告をする
  4. 書類の審査や必要な検査を受け、税金を納める
  5. 輸入の許可書を保税地域の担当者に示して、貨物を引き取る
輸入の貨物が保税地域に入ってから、輸入の許可を受けて引き取られるまでの流れを示した図解

関税法第67条の2第3項には「輸入申告は、その申告に係る貨物を保税地域等に入れた後にするものとする」とあります。

保税倉庫での通関は、この「入れた後に申告」が基本の形なんです。

審査と検査で時間がかかる時

保税倉庫での通関は、書類の審査だけで済む時もあれば、検査が入る時もあります。

税関長が指定した場所で検査を受ける場合、税関へ納める手数料などの費用はかからないと案内されています(カスタムスアンサー1112)。

ただ、貨物を検査の場所まで運ぶ費用や、開けて詰め直す費用は輸入者などの負担です。

貨物が着く前に書類を出しておける予備審査制という仕組みもあります(カスタムスアンサー1108)。

対象は全ての輸入貨物なので、急ぎの貨物は通関業者に相談してみてください。

3か月を超えて置くなら蔵入承認

保税蔵置場には長く置けますが、何もしなくてよいわけではありません。

関税法第43条の3では、外国貨物を入れた日から3か月を超えて置こうとする時は、超える日の前に税関長の承認を受ける決まりです。

これが蔵入承認です。

外国貨物を長く置ける保税蔵置場の倉庫のイメージ写真
見落としやすい点

「保税蔵置場は2年置けるから、手続はいらない」と思いがちです。3か月を超えて置く予定なら、その前に蔵入承認の申請が要ります。保管の予定が延びそうな時は、早めに倉庫の担当者や通関業者に相談しておきましょう。

申告書の略号で見る保税の動き

輸入申告書には、貨物がどう動くかを示す略号があります。

略号意味(輸入申告書の記載要領)
IC直輸入
IS蔵入れ
ISW蔵出輸入
IM移入れ
IMW移出輸入
IA総保入れ
IAC総保出輸入

出典は税関の輸入申告書(C-5020)記載要領です。

ICやISの違いはIC通関・IS通関とは?で詳しく説明しています。

輸出の時の保税倉庫と通関

輸出でも、保税地域は大事な役割を持っています。

カスタムスアンサー5001には、申告は搬入前でもできるけれど、輸出の許可は原則として保税地域に搬入した後に行われる、とあります。

保税倉庫から輸出通関をする流れ
  1. 輸出する貨物を、港や空港の近くの保税地域に運び入れる
  2. 輸出申告をして、書類の審査や必要な検査を受ける
  3. 輸出の許可を受ける(ここから外国貨物になる)
  4. 保税地域から船や飛行機に積み込む

輸出の許可を受けた貨物は外国貨物になるので、積み込むまで保税地域で管理されます。

輸出の流れ全体は輸出通関の流れで詳しく見ています。

許可の後に予定が変わったら

輸出の許可を受けた後で、船の予定が変わることもありますよね。

許可の後の貨物の扱い

輸出の許可を受けた貨物は外国貨物です。関税法第30条の決まりで、外国貨物は保税地域以外の場所には置けません。許可の後に「いったん自社の倉庫に戻したい」となった時は、自己判断で動かさず、通関業者に相談しましょう。

例えばこんな相談になります。

「輸出の許可は出たのですが、船が来週に延びました。貨物はどこで待たせればいいですか?」

「外国貨物なので、保税地域の中で待つ形になります。置き場所は倉庫と調整しますね」

保税地域に入れずに輸出できる場合

例外として、保税地域に入れずに輸出の許可を受けられる場合もあります。

場面どういう扱いか
特定輸出者(AEO輸出者)の輸出保税地域等に入れずに輸出申告をして許可を受けられる
認定製造者が製造した貨物の輸出別の輸出者が輸出する時も、保税地域に入れずに許可を受けられる
本船扱い・ふ中扱い税関長の承認を受けて、船に積んだ状態で申告する

本船扱いの仕組みは本船通関(本船扱い)とは?、コンテナヤードでの通関はCY・CFSとは?で紹介しています。

保税運送とは?外国貨物のまま運ぶ仕組み

保税制度のもう1つの柱が、保税運送です。

関税法第63条第1項では、外国貨物は税関長に申告して承認を受ければ、開港、税関空港、保税地域、税関官署などの間に限って、外国貨物のまま運送できると決めています。

保税運送のポイント

保税運送は、輸入の許可を受ける前の貨物を、港や空港から別の保税地域へ運ぶ時などに使われます。運送目録を税関に示して確認を受ける決まりもあります。

例えば、港に着いた貨物を、内陸の保税蔵置場まで運んでから通関する場面です。

運んでいる間も外国貨物なので、税関の承認の下で運ばれます。

AEOの特定保税運送者は、この保税運送について1回ごとの承認が要りません(カスタムスアンサー9206)。

保税運送が使われる場面の例

保税運送は、決まった場所の間で外国貨物を動かす時に使われます。

場面運ぶ区間の例
港に着いた貨物を内陸の倉庫で通関したい港の保税地域から内陸の保税蔵置場へ
空港に着いた荷物を別の場所でまとめて通関したい空港から別の保税地域へ
輸入した原料を外国貨物のまま加工したい港の保税地域から保税工場へ
展示会に外国の出品物を並べたい保税地域から保税展示場へ

どの区間でも、外国貨物のまま運ぶ点は同じです。

追跡に「保税運送中」と出たら

海外通販の荷物の追跡で「保税運送中」と出ることがあります。

これは、荷物がまだ外国貨物のまま、保税の場所の間を運ばれている段階だと考えられます。

「保税運送中」のまま動かない時に確かめること
  • 追跡番号で、最後に表示された日時と場所を確かめる
  • 配送している事業者の案内で、保税運送の後に何が起きるかを読む
  • 税関から書類の提出や連絡を求められていないか確かめる
  • 数日たっても動かなければ、配送している事業者に問い合わせる

荷物が止まる理由は通関が遅いのはなぜ?でも詳しく説明しています。

よくある相談|保税と通関で迷った時

保税については、海外通販の荷物を待っている方からも、貿易の勉強をしている方からも相談が多く見られます。

よくある3つを取り上げます。

相談1:国際小包が「保税運送中」のまま3日たった

『何か問題があって止められているの?』と不安になる相談です。

保税運送中という表示は、それだけで問題があるという意味ではありません。

ただ、運送の後には通関の手続があり、税関の検査や書類の確認が入ると時間がかかることもあります。

例えばこんな問い合わせの仕方があります。

「追跡が保税運送中のまま止まっています。こちらで用意する書類や手続はありますか?」

追跡の表示の意味や見通しは、配送している事業者がいちばん詳しく知っています。

相談2:「保税倉庫」「保税工場」「保税蔵置場」の看板の意味は?

港の近くでこうした看板を見て、何の場所か気になったという相談です。

保税工場と保税蔵置場は、関税法の保税地域の種類の名前です。

保税蔵置場は外国貨物を長く置く場所、保税工場は外国貨物を原料に加工や製造をする場所です。

「保税倉庫」の看板は、外国貨物を置ける倉庫であることを伝える呼び方として使われていると考えられます。

相談3:保税蔵置場に2年も貨物を置く理由は?

貿易の勉強をしている方から、『輸入する貨物を2年も置いておく理由が分からない』という相談もあります。

外国貨物のまま保税蔵置場に置いている間は、まだ輸入していないので、輸入の時の関税などはその時点では納めていません。

そのため、国内でいつ売るかを見ながら、必要な分だけ輸入の手続をする、という使い方ができるわけです。

また、日本で売らずに、別の国へ送り出す選択肢を残しておけるのも保税の特徴です。

ただし、3か月を超えて置く場合は蔵入承認が要る点に注意しておきましょう。

通関士試験の勉強では、保税地域の種類ごとの期間や作業を表にして覚えておくと、関税法の問題で迷いにくくなります。

この記事の5種類の表を、自分の言葉で書き直してみるのもおすすめです。

通関の仕事に興味がある方へ

保税地域の種類や外国貨物の扱いは、通関の仕事で毎日のように出てくる知識です。

通関の知識を仕事にしたい人には、国家資格の通関士という道もあります。

どんな資格かは通関士とは?仕事内容と国家資格としての役割で紹介しています。

通関ドットコム

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よくある質問

保税とはどういう意味ですか?

関税などを納める前の外国貨物を、保税地域に置いたり、外国貨物のまま運んだりできる仕組みのことです。保税地域制度と保税運送制度の2つがあります。

保税倉庫での通関はどう進みますか?

輸入の場合は、貨物を保税地域に入れた後に輸入申告をして、審査や検査を受け、税金を納めて許可を受けます。許可書を倉庫の担当者に示すと、貨物を引き取れます。

保税地域には何種類ありますか?

指定保税地域、保税蔵置場、保税工場、保税展示場、総合保税地域の5種類です。置ける期間やできる作業がそれぞれ違います。

保税蔵置場にはどれくらい置けますか?

税関の案内では2年(延長可能)です。ただし、入れた日から3か月を超えて置く時は、その前に蔵入承認を受ける必要があります。

通関倉庫とはどんな倉庫ですか?

通関の現場で、通関を待つ貨物を置いておく倉庫を指して使われる呼び方です。法令上どの種類の保税地域に当たるかは、倉庫の運営者に確かめてみてください。

輸出の時も保税地域に入れますか?

原則として、輸出の許可は貨物を保税地域に入れた後に出ます。特定輸出者の輸出や本船扱いなど、入れずに許可を受けられる例外もあります。

まとめ

この記事の要点
  • 保税は、関税などを納める前の外国貨物を決まった場所に置いたり運んだりできる仕組み
  • 保税地域は5種類で、置ける期間とできる作業が違う
  • 「保税倉庫」は法令上の種類の名前ではなく、長く置く場所は保税蔵置場
  • 輸入申告は原則として保税地域に入れた後、輸出の許可も原則として搬入した後
  • 3か月を超えて保税蔵置場に置くなら蔵入承認が要る
通関ドットコム

通関ドットコム 編集部

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