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海外の仕入先から届いた見積書に「DAP」と書いてあって、『結局、日本の輸入通関はうちがやるの?向こうがやるの?』と迷っている方も多いはずです。
結論から言うと、DAPとCIPでは輸入通関は買主の役目で、DDPなら売主の役目です。輸出通関は、この3つとも売主が行います。
この記事では、DAP・DDP・CIPなどの取引条件ごとに、通関を誰がするのかと、契約の前に確かめておきたいことをお話しします。
インコタームズとは?輸入通関との関係
インコタームズは、国際商業会議所(ICC)が定めた貿易取引条件とその解釈の国際規則です。最新版は2020年1月1日に発効した「インコタームズ2020」で、売主と買主の義務の項目に「輸出通関/輸入通関」があります。
ジェトロの解説(インコタームズ2020)では、インコタームズを「International Commercial Terms」の略と説明しています。
DAPやDDPといったアルファベット3文字は、それぞれが1つの規則の名前なんです。
インコタームズが決めないこと
ここは意外と見落とされがちなところです。
ジェトロの解説では、インコタームズは代金や支払い方法、物品の所有権が移る時点、契約違反の結果などは定めていないとされています。
さらに「インコタームズは、法律でも条約でもありません」とも書かれています。
インコタームズは、使うと決めて契約書に書いて初めて効いてくるものです。見積書に「DAP」とあるだけで、どの版の規則か、どこを仕向地とするかが書かれていないと、後で解釈がずれることがあります。
通関の全体の中でどこに関わる?
通関は、輸出する国と輸入する国のそれぞれで行う手続です。
インコタームズは、そのどちらの通関を売主と買主のどちらが手配するかを決める物差しの一つ、と考えると分かりやすいですよね。
通関そのものの流れは通関とは?輸出入で税関の許可を受けるまでの流れで先に押さえておくと、この先の話がすっと入ってきます。
11の規則の名前
インコタームズ2020には11の規則があります。
| 略号 | 和名(ジェトロの表記) |
|---|---|
| EXW | 工場渡し |
| FCA | 運送人渡し |
| CPT | 輸送費込み |
| CIP | 輸送費保険料込み |
| DAP | 仕向地持込渡し |
| DPU | 荷卸込持込渡し |
| DDP | 関税込持込渡し |
| FAS | 船側渡し |
| FOB | 本船渡し |
| CFR | 運賃込み |
| CIF | 運賃保険料込み |
2010年版からの主な変更として、DATからDPUへの変更や、CIFとCIPの保険の補償水準の違いがジェトロの解説で挙げられています。
DAPの輸入通関は誰がする?
いちばん検索されているのがDAPの輸入通関です。
DAP(仕向地持込渡し)は、売主が指定された仕向地まで物品を運んで、買主に引き渡す条件です。
ジェトロの解説(DAPでの輸出時の海上保険付保の必要性)では、分担がこう説明されています。
- 輸出通関に関わる費用
- 指定仕向地で引き渡すまでに生じる費用(輸入通関を除く)
- 引き渡すまでのリスク
- 輸入通関に関わる一切の費用
- 指定仕向地で引き渡されたあとの費用
- 引き渡されたあとのリスク
つまり、DAPでは、日本に輸入する時の通関は買主側で手配することになります。
『運賃込みで届けてくれるなら、通関もやってくれると思っていた』という声は本当に多いんです。
DAPで買う時に用意すること
DAPで輸入するなら、日本側で通関の段取りを組んでおく必要があります。
- 輸入通関を頼む通関業者を決めておく
- 仕入書(インボイス)や包装明細書を、売主から早めにもらう
- 貨物が置かれる保税地域と到着予定を確かめる
- 関税や消費税をどう納めるかを決めておく
- 他の法律の手続が要る品目でないか確かめる
輸入通関の流れそのものは輸入通関の流れで詳しく説明しています。
DAPで輸入する時の日本側の流れ
DAPで買う時の、日本側の流れを目安として並べます。
- 売主から出荷の連絡とインボイスなどの書類を受け取る
- 通関業者に書類を渡し、輸入申告の準備を頼む
- 貨物が日本に着き、保税地域に入る
- 輸入申告をして、審査や必要な検査を受ける
- 関税と消費税を納めて輸入の許可を受ける
- 指定仕向地で売主から引渡しを受ける
実際の順番は、仕向地をどこにするかで少し変わります。
例えば仕向地を自社の倉庫にした場合は、通関を終えた貨物を売主側の運送で倉庫まで運んでもらう形になります。
DDP・DPU・CIPの輸入通関の分担
DAP以外の条件も見ておきましょう。
ジェトロ大分の解説資料(インコタームズ2020版の概要)では、D類の3つの規則の分担が表にまとめられています。同じ連載では、規則ごとの通関の義務も1つずつ説明されています。
DDPの輸入通関は売主
DDPの和名は「関税込持込渡し」です。
この条件では、売主が輸出通関に加えて輸入通関も行い、輸入関税などを支払う義務を負います(インコタームズ2020年規則の解説6)。
同じ解説では、DDPは売主に最大の義務を課した規則とされています。売主が輸入通関をできないなら、輸入通関を買主に任せるDAPかDPUを考えるべき、とも書かれています。
『海外の売主が日本の通関までやってくれる』という条件なので、買主にとっては手間が少ない形なんです。
ただ、日本で輸入申告をするには、日本の手続に沿う必要があります。
ジェトロの解説では、外国企業が輸入者として日本に輸入する時は、日本の居住者を税関事務管理人に選んで税関長に届け出るとされています。この場合、関税や消費税の納税義務者は輸入者である外国企業です(非居住者の輸入通関および保税貨物管理:日本)。
DDPで取引する時は、日本側の申告を誰の名前で行うかを、売主と通関業者の三者で確かめておきましょう。
『全部やってくれるなら楽でいい』と思う一方で、こちらから手続の進み具合が見えにくくなる面もあります。
- 日本の通関業者は誰が手配するか
- 関税と消費税を誰の名前で納めるか
- 輸入許可書の控えをもらえるか
- 他の法律の手続が要る品目の場合、誰が手続するか
DPUの輸入通関は買主
DPU(荷卸込持込渡し)は、2020年版でDATから変わった規則です。
輸出通関は売主、輸入通関の義務は買主にあり、荷降ろしは売主が行います(インコタームズ2020年規則の解説5)。
DAPとの違いは、仕向地での荷降ろしを売主がするかどうかなんです。DPUは、売主に仕向地での荷降ろしを求める唯一の規則と説明されています。
もし買主が輸入通関をしないと、貨物は仕向国の港や内陸のターミナルで留め置かれます。その間の危険は買主が負う、とDAPとDPUの解説に書かれています。
CIPの輸入通関は買主
CIP(輸送費保険料込み)は、売主が指定仕向地までの運送契約を結び、輸送費と貨物保険料を負担する条件です。
ジェトロ大分の解説(インコタームズ2020年規則の解説4)では、CIPは原則として売主に輸出の通関の義務を課しています。一方で、輸入の通関や輸入関税の支払いなど、輸入通関の手続について売主に義務はないとされています。
つまり、日本に輸入するなら、日本の輸入通関は買主側で手配することになるんです。
ここで間違えやすいのが、危険が移るタイミングです。
ジェトロの解説(コンテナ輸送の貿易取引条件)では、CIPは貨物が運送人に引き渡された時点で危険が買主に移るとされています。仕向地まで運賃と保険料を売主が払っても、日本に着くまで売主が責任を持つ条件ではありません。
『運賃も保険も向こう持ちなら、日本の通関も向こうでは?』と思いがちですよね。
保険料込みの条件なので、保険の範囲に目が行きがちです。その分、日本側の通関の手配が抜けていないかを、契約の段階で一緒に確かめておくと安心です。
ジェトロの解説では、2020年版の変更点の一つとして、CIFはICC(C)、CIPはICC(A)という保険の補償水準の違いが挙げられています。
取引条件ごとの通関の分担表
ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。
『結局、どの条件なら誰が何をするの?』を一目で見られるように、通関ドットコム編集部で分担表を作りました。
ジェトロとジェトロ大分の解説で確かめられた範囲で書いています。
| 取引条件 | 輸出通関 | 輸入通関 | 引き渡しの時点 |
|---|---|---|---|
| EXW(工場渡し) | 買主 | 買主 | 売主の施設などで引き渡した時 |
| FCA(運送人渡し) | 売主 | 買主 | 買主が指名した運送人に引き渡した時 |
| CIP(輸送費保険料込み) | 売主 | 買主 | 売主が手配した運送人に引き渡した時 |
| DAP(仕向地持込渡し) | 売主 | 買主 | 仕向地で、荷降ろしせずに引き渡した時 |
| DPU(荷卸込持込渡し) | 売主 | 買主 | 仕向地で、荷降ろしして引き渡した時 |
| DDP(関税込持込渡し) | 売主 | 売主 | 仕向地で、輸入通関を済ませて引き渡した時 |
EXWは、売主に通関の義務がなく、買主が輸出通関から輸入通関までを負う規則です(EXW(工場渡)の輸出入手続き)。同じ解説では、売主が輸出通関を行うFCAの利用を検討することも有効とされています。
荷降ろしは、DAPとDDPでは買主、DPUだけが売主です。

この表で覚えておきたいのは、輸入通関を売主がするのはDDPだけ、という点です。
CIPもDAPもDPUも、輸入通関は買主の役目になります。
- 「持込渡し」という名前から、通関まで売主がやると思い込む
- DAPとDDPの1文字違いを読み違える
- 仕向地の場所を書かずに、規則の名前だけで合意してしまう
どれも、見積書の段階で「日本の輸入通関はどちらが手配しますか?」と一言聞くだけで防げます。
関税の支払いはどう考える?
関税や消費税を誰が納めるかは、輸入通関を誰がするかと深く関わります。
DDPは名前のとおり「関税込」の条件です。
DAPでは、買主が輸入通関に関わる一切の費用を負担するとジェトロは説明しています。
関税と消費税の計算の流れは通関でかかる関税と消費税、通関にかかる費用の内訳は通関費用の内訳で確かめられます。
輸入通関で使う価格と、契約前に確かめること
取引条件は、税金を計算するもとになる価格にも関わってきます。
日本の関税は、原則として輸入申告の時の貨物の価格(課税価格)をもとに計算されます(カスタムスアンサー1104)。
課税価格は、実際に支払う価格に、含まれていない運賃などを加えて計算するのが原則です(カスタムスアンサー1403)。
加える物の代表が、輸入港に着くまでの運送に要する運賃、保険料その他運送に関する費用です。
インボイスの価格に「輸入港に着くまでの運賃や保険料」が入っているかどうかで、加える物が変わります。取引条件はその手がかりになりますが、最後は内訳で確かめるのが確実です。
条件ごとの価格の見方
取引条件の名前を手がかりに、インボイスの価格をどう見るかの目安をまとめます。
| 取引条件 | 名前からわかる手がかり | 確かめること |
|---|---|---|
| FOB・FCA | 名前に運賃や保険料の言葉が入っていない | 輸入港までの運賃と保険料を加える必要があるか |
| CIF・CIP | 名前に運賃(輸送費)と保険料が入っている | 価格に含まれる運賃と保険料の内訳 |
| DAP・DPU | 仕向地まで持ち込む条件 | 輸入港より先の運送費が含まれていないか |
| DDP | 名前のとおり関税込 | 日本で納める税金などがどう含まれているか |
DAPやDDPの価格から課税価格をどう出すかは、細かな計算が絡みます。
迷った時は、運賃や保険料の明細をそろえて通関業者に相談してみてください。
価格の内訳を確かめる書類
輸入申告で使う書類には、価格の内訳を確かめる手がかりがたくさん入っています。
- 仕入書(インボイス)と包装明細書
- 船荷証券または海上運送状(航空貨物は航空貨物運送状)
- 運賃明細書と保険料明細書
- 契約書と価格表
取引条件が契約書にどう書かれているかと、運賃や保険料の明細をセットで見れば、価格の見方で迷うことはぐっと減ります。
書類の全体はカスタムスアンサー1107で確かめられます。
契約の前に確かめておくこと
取引条件のトラブルは、契約を結んだあとに気づくことがほとんどです。
先にここを押さえておくと、通関の段階で慌てずに済みます。
- 使うインコタームズの版(インコタームズ2020など)を契約書に書く
- 規則の名前と、仕向地などの場所をはっきり書く
- 輸出通関と輸入通関を誰が手配するかを確かめる
- 関税や消費税、通関の費用を誰が負担するかを確かめる
- 保険をどちらがかけるか、補償の範囲を確かめる
例えばこんなやり取りが、契約前にできていると安心です。
「DAP東京でお願いします。日本の輸入通関はこちらで手配します」
「了解です。インボイスとパッキングリストは出荷の前日に送りますね」
物流の全体の中で通関がどこに入るかは、物流と通関の関係でまとめています。
社内で確かめたい3つの質問
『社内の誰に聞けばいいの?』という時は、購買、経理、物流の担当にこの3つを回してみてください。
取引条件を決める前に、社内でこの3つに答えられるか確かめてみてください。
- 日本の通関業者は、どこに頼むか決まっているか
- 関税と消費税を納めるお金と段取りは用意できているか
- 品目に他の法律の手続が要るか、調べてあるか
1つでも「まだ」なら、売主側に通関まで任せる条件を検討するのも一つの方法です。
反対に、通関業者との付き合いがあり、税金の段取りも慣れているなら、DAPで自社が通関を手配した方が進み具合を把握しやすいこともあります。
どちらが合うかは、取引の回数や品目によって変わります。
よくある相談|取引条件と通関の疑問
取引条件と通関は、貿易の仕事を始めたばかりの方からの相談がとても多いテーマです。
よく読まれている3つを取り上げます。
相談1:DDU(DAP)条件で輸入する時に必要な手続は?
『DDUやDAPの条件で輸入する時、日本で何をすればいいの?』という質問は、とても多く読まれています。
まず、DDUはインコタームズ2020の11の規則には入っていません。
DAPなら、輸入通関は買主の役目なので、日本側で通関業者に依頼し、関税や消費税を納めて輸入の許可を受ける流れになります。
依頼先の選び方は通関業者とは?で説明しています。
相談2:アメリカへDAPで輸出したら、現地の輸入通関は誰が手配する?
『アメリカの取引先にDAPで航空貨物を送る。現地の輸入通関は輸入者の手配でいいの?』という相談です。
DAPでは、輸入通関に関わる費用は買主が負担するとジェトロは説明しています。
そのため、相手国の輸入通関は買主側で手配するのが、DAPの考え方に沿った形です。
ただ、実際の手配は、契約書の書き方とフォワーダーの段取りで決まります。
出荷の前に、取引先と「現地の通関は誰がどこに頼むか」をメールで確かめておきましょう。
例えばこんな一文を添えるだけで、行き違いはかなり減ります。
「DAPでの出荷のため、貴国の輸入通関と関連費用は御社でご手配をお願いします」
相談3:DDPなのに、日本の消費税はどうなるの?
『DDPで仕入れたのに、日本の消費税の請求が来た』という相談も見かけます。
DDPは、売主が輸入通関をして輸入関税などを払う条件です。ただ、日本で誰が輸入者として申告し、税金を納めたかは、日本の書類で確かめる必要があります。
ジェトロの解説では、外国企業が輸入者として日本に輸入する時は、外国企業が関税や消費税の納税義務者になるとされています。反対に、日本の買主の名前で申告されていれば、買主に請求が来ることもありえます。
請求が来た時は、慌てずに契約書の取引条件と、輸入許可書の輸入者の欄を見比べてみてください。
それでも分からない時は、通関を担当した通関業者に「この税金は誰の名前で納めたものですか」と聞いてみましょう。
書類の流れが分かれば、売主との精算の話もしやすくなります。
通関の仕事に興味がある方へ
貿易の現場では、取引条件の3文字が、通関の段取りや税金の負担まで左右することがよくあります。
取引条件を読み解いて、通関の段取りにつなげる仕事に面白さを感じた方もいるかもしれません。
通関の知識を仕事にしたい人には、国家資格の通関士という道もあります。
どんな資格かは通関士とは?仕事内容と国家資格としての役割で紹介しています。
通関ドットコム
通関士を目指すなら、講座を比べてみませんか
実務の申告書問題や計算問題の解説、法改正への対応など、独学では用意しにくい部分だけでも講座を使うと準備が進めやすくなります。学び方の比べ方と、資料請求で講座を選ぶ時のチェックポイントをまとめました。
講座の選び方通関士の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。講座の内容・料金・受講期間は各講座の公式案内でご確認ください。

よくある質問
DAPの輸入通関は誰がしますか?
買主です。ジェトロの解説では、DAPの買主は輸入通関に関わる一切の費用と、指定仕向地で引き渡されたあとの費用とリスクを負担するとされています。
DDPの輸入通関は誰がしますか?
売主です。ただし、日本の税関に誰の名前で輸入申告をするかは日本の手続の話なので、売主と通関業者で確かめておきましょう。
CIPの輸入通関は誰がしますか?
買主です。ジェトロ大分の解説では、CIPは売主に輸出の通関の義務を課す一方、輸入通関の手続について売主に義務はないとされています。
インコタームズは法律ですか?
法律でも条約でもありません。使う場合は、契約書にインコタームズを使うことと版を書いておく必要があります。
DAPとDPUの違いは何ですか?
どちらも輸入通関は買主ですが、仕向地での荷降ろしはDAPが買主、DPUが売主です。
まとめ
- インコタームズはICCの貿易取引条件の国際規則で、最新版はインコタームズ2020
- DAP・DPU・CIPの輸入通関は買主、DDPは売主
- 分担表の中で輸出通関が買主なのはEXWだけで、FCA・CIP・D類の3つは売主
- 取引条件はインボイスの価格の見方にも関わる
- 契約書には版、規則、場所、通関と費用の分担を書いておく





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