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海外の展示会に製品を出すことになって、『持っていって持ち帰るだけなのに、税金や手続はどうなるの?』と調べている方も多いはずです。
結論から言うと、条件が合えば、ATAカルネという通関用の手帳を使って、免税扱いで手続を簡単に進められます。
この記事では、カルネ通関が使える場面と、通常の輸出入とどちらを選ぶかの決め方、出発前から帰国までの手順をお話しします。
ATAカルネとは?通関で使う国際的な手帳
ATAカルネは「物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)」に基づく通関用の書類です。外国の税関でその都度通関書類を作らなくても、免税扱いで輸出入の通関手続を簡単で速く進められます。
税関のカスタムスアンサー7302では、ATAカルネを「世界の主要国の間で結ばれている」条約に基づく国際的な制度の通関用書類と説明しています。
「カルネ」は手帳という意味の言葉です。
1冊の手帳を持って国境を越えるたびに使うので、通関用のパスポートのようなイメージを持つと分かりやすいですよね。
カルネ通関で何が楽になる?
普通に物を外国へ持ち込むと、その国で輸入の申告をして、関税や付加価値税などを納めることになります。
持ち帰る予定の物でも、手続の上では「輸入」として扱われるのが基本です。
ATAカルネを使うと、こうした手続を免税扱いで進められます。
- 外国の税関で毎回通関書類を作らなくてよい
- 免税扱いで輸出入の通関が進む
- 手続が簡単で速くなる
- 持ち込む国がATA条約の加盟国である必要がある
- 有効期間は1年以内
- 持ち込んだ物は期間内に持ち出す義務がある
発給しているのはどこ?
日本でのATAカルネの発給は、一般社団法人「日本商事仲裁協会」が行っていると、税関の7302で案内されています。
申込みの方法や必要な書類は、発給機関に直接確かめてみてください。
通関の中でのカルネの位置づけ
通関は、ふだんは「輸入の許可」と「輸出の許可」を受ける手続のことを指します。
カルネは、その輸出入の通関を、一時的な持ち出しと持ち込みに限って簡単にする特別な扱いなんです。
通関そのものの流れは通関とは?輸出入で税関の許可を受けるまでの流れで先に押さえておくと、カルネの便利さが分かりやすくなります。
3つの方法を並べてみる
一時的に物を外国へ持ち出す時の方法を、ざっくり比べておきますね。
| 比べる点 | ATAカルネの通関 | 通常の輸出入 | 旅具通関(手荷物) |
|---|---|---|---|
| 向いている物 | 商品見本、職業用具、展示用物品 | 販売する商品を含むすべての貨物 | 手荷物で運ぶ少量の物 |
| 相手国での税 | 免税扱いで通関 | その国の税がかかるのが基本 | その国のルールによる |
| 書類 | カルネ1冊を国ごとに使う | 国ごとに通関書類を作る | 口頭申告などで済む場合がある |
| 条件 | 加盟国、有効期間1年以内 | 特になし | 総価格などの目安がある |
それぞれ得意な場面が違うので、物と行き先に合わせて選ぶのがいちばんです。
ATAカルネが使える物と使う時の条件
『うちの製品でも使えるの?』というのが、いちばん気になるところですよね。
税関の案内では、利用できる物品の主なものとして商品見本、職業用具、展示用物品が挙げられています。
- 持ち込もうとする国がATA条約に加盟している
- カルネの有効期間は1年以内
- 利用できる物品は主に商品見本、職業用具、展示用物品
- 持ち込んだ物品は、カルネの有効期間内に持ち出す義務がある
ここで大事なのは、物品が条件に合っていても、持ち込もうとする国によって全部が認められるとは限らないことです。
同じ物でも、行き先の国で扱いが変わることがあるんです。
加盟国かどうかの確かめ方
行き先の国がATA条約に入っているかは、カルネを使えるかの入口になる大事な条件です。
- 最終の行き先の国を書き出す
- 途中で荷物を降ろしたり通関したりする国があるかを確かめる
- それぞれの国が加盟しているか、発給機関に確かめる
- 持ち出す物品がその国で認められるかもあわせて聞く
経由する国が多い出張ほど、ここを丁寧に確かめておくと現地で慌てずに済みます。
3つの物品の具体例
物品の種類ごとに、どんな場面で使われることが多いかを並べました。
| 物品の種類 | 使われる場面の例 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 商品見本 | 海外の取引先に見せるサンプル | 販売せずに持ち帰るか |
| 職業用具 | 測定器などの仕事で使う道具 | 仕事で使ったあと持ち帰るか |
| 展示用物品 | 展示会や見本市の出品物 | 会期が終わったら持ち出すか |
どれにも共通するのは「一時的に持ち込み、また持ち出す物」だという点です。
現地で売ったり、置いてきたりする予定の物は、カルネには向きません。
「展示会で好評なら、その場で売ってしまおう」と考えていると、カルネの前提から外れてしまいます。売る可能性がある物は、最初から通常の輸出入の手続で考えておきましょう。
有効期間は1年以内
カルネの有効期間は1年以内です。
会期の長い展示会や、何か国も回る出張では、帰ってくる時期が有効期間に収まるかを先に確かめておきましょう。
カルネか通常の輸出入か?3つの物差しで決める
ここからは、この記事でいちばん伝えたい判定の仕方です。
カルネを使うかどうかは「物の種類」「持ち出す期間」「また日本に持ち帰るか」の3つで考えると迷いにくくなります。
通関ドットコム編集部で、判定の表を作りました。
| 物の種類 | 期間 | 持ち帰るか | 向いている方法の目安 |
|---|---|---|---|
| 商品見本・職業用具・展示用物品 | 1年以内 | 持ち帰る | ATAカルネの通関(行き先が加盟国の場合) |
| 商品見本・職業用具・展示用物品 | 1年を超える | 持ち帰る | カルネの有効期間に収まらないので通常の手続を検討 |
| 販売する商品 | 問わない | 持ち帰らない | 通常の輸出入の手続 |
| 現地で使い切る消耗品 | 問わない | 持ち帰らない | 通常の輸出入の手続 |
| 手荷物で運ぶ少量の商品見本 | 短い | 持ち帰る | 旅具通関で足りる場合もある |

『行き先の国が加盟しているか分からない』という時は、発給機関に確かめるのが確実です。
判定に迷いやすい2つのケース
表に当てはめても迷うケースを、2つ取り上げておきます。
1つ目は、見本の一部を現地で配るかもしれない場合です。
配る分と持ち帰る分を分けて考え、配る分は最初から通常の手続に回すのが分かりやすい方法です。
2つ目は、出張の途中で行き先が増えるかもしれない場合です。
追加の国が加盟国か、物品が認められるかを、出発前にまとめて確かめておくと安心です。
「全部を、そのまま、期間内に持ち帰るか」に答えられるかどうか。ここで「はい」と言い切れない物は、カルネ以外の手続も一緒に検討しておきましょう。
手荷物で運ぶなら旅具通関も選択肢
少量のサンプルを手荷物で運ぶ場合は、旅具通関で手続できることもあります。
税関のカスタムスアンサー7205では、携帯して輸出する商業貨物は、すべての品目の総価格の合計額が30万円程度以下の場合は旅具通関手続ができると案内しています。
この場合は税関への口頭申告が必要です。
ただ、これは日本を出る時の手続の話です。
相手国に入る時の扱いは、その国のルールで決まります。
手荷物で商品やサンプルを運ぶ時の流れはハンドキャリーの通関で、旅行の携帯品の申告は旅具通関とは?で詳しく説明しています。
カルネを使わない場合の輸出
カルネを使わず、通常の輸出として送り出すこともできます。
その場合は、輸出申告をして輸出の許可を受け、相手国では輸入の手続をすることになります。
日本側の流れは輸出通関の流れで確かめてみてください。
カルネ通関の手順|出発前・現地・帰国時
カルネ通関で輸出する時の流れを、時期ごとに分けて並べます。
細かな書き方や窓口は発給機関と税関の案内で確かめる前提で、全体の順番をつかんでおきましょう。
- 出発前:持ち出す物の一覧と、行き先の国、期間を決める
- 出発前:行き先がATA条約の加盟国か、その物品が認められるかを確かめる
- 出発前:発給機関にカルネの発給を申し込む
- 日本を出る時:カルネを使って輸出の通関をする
- 現地に入る時:カルネを使って輸入の通関をする
- 現地を出る時:持ち込んだ物を有効期間内に持ち出す
- 日本に戻る時:カルネを使って持ち帰った物の通関をする
出発前に用意しておくこと
いちばん手間がかかるのは出発前です。
物の一覧を作る時は、現地で税関に見せても分かる書き方にしておくと安心です。
- 持ち出す物を1つずつ一覧にする
- 型番や数量が、実物と合っているか確かめる
- 行き先の国と、経由する国を書き出す
- 帰国する日が有効期間に収まるか確かめる
- 現地で売ったり置いてきたりする物が混ざっていないか確かめる
社内で準備を分担するなら
カルネの準備は、営業、出張する人、物流の担当者など、関わる人が多くなりがちです。
『誰が何をするのか分からないまま出発日が近づく』という声もよく聞きますよね。
| 担当 | 主な役割の例 |
|---|---|
| 出張する人 | 持っていく物と日程を決める |
| 物流や総務の担当 | 一覧を作り、発給の申込みを進める |
| 上司や管理部門 | 現地で売らない方針を確認する |
役割を最初に決めておくだけで、出発前のバタバタがぐっと減ります。
現地で気をつけること
現地では、カルネに書いた物をそのまま持ち込み、そのまま持ち出すことが基本になります。
例えばこんな場面です。
「展示会のあと、見本を1つ取引先に置いてきてもいいですか?」
「カルネで持ち込んだ物は持ち出す義務があります。置いてくるなら、現地の手続を先に確かめましょう」
帰国してからのこと
日本に戻ったら、持ち帰った物の通関をカルネで行います。
全部を持ち帰れたか、カルネの記録と実物を照らし合わせておきましょう。
次にまた同じ展示会に出る予定があるなら、今回の一覧や日程をそのまま残しておくのがおすすめです。
2回目からは、準備にかかる時間がかなり短くなりますよ。
つまずきやすいところ
カルネの手続でよくあるつまずきを、先に知っておきましょう。
- 一覧に書いた物と、実際に持っていく物の数が合わない
- 帰国の予定が延びて、有効期間に収まらなくなる
- 現地で物を売ったり、置いてきたりしてしまう
- 経由する国の扱いを確かめていなかった
どれも、出発前の一覧作りと日程の確認でかなり防げるものです。
日本に外国の物を持ち込む場合(外国カルネ)
ここまでは日本から持ち出す話でした。
逆に、外国の会社が日本の展示会などに物を持ち込む時にもATAカルネが使われます。
税関のカスタムスアンサー7303では、外国のカルネで展覧会・博覧会の出品物や巡回興業用の物品などを一時的に持ち込み、期間が終わったら持ち出す流れが案内されています。
根拠はATA条約の実施に伴う関税法等の特例に関する法律(ATA条約特例法)です。
展示会の出品物でカルネが無い時は?
カルネを持たずに展示会の出品物が日本に届くこともあります。
税関のカスタムスアンサー1113では、輸入の許可の前に貨物を引き取る承認(BP)の利用例として、展示会への出品が挙げられています。
BPを受けるには、関税などに相当する担保を税関に出す必要があります。
どの方法が合うかは、会期や持ち出す予定によって変わるので、通関業者や税関に相談してみてください。
外国貨物を日本で展示する方法には、保税展示場という保税地域もあります。展示・使用ができる場所で、期間は税関長が指定します(カスタムスアンサー9203)。
日本側の担当者が確かめること
海外の取引先から「カルネで持っていくので」と言われることもありますよね。
受け入れる側としては、持ち込む物の一覧と会期、持ち出す日を共有してもらうと、当日の段取りが組みやすくなります。
コンテナそのものを一時的に持ち込む時の免税の扱いは、カルネとは別の制度です。
気になる方は容器通関・リスト通関とは?も読んでみてください。
よくある相談|カルネ通関で迷った時
カルネは、仕事で海外へ物を持ち出す方からも、趣味の旅行を計画している方からも相談があります。
よく読まれている相談を3つ取り上げます。
相談1:仕事の測定器を持って入国したい
『海外から高価な測定器を持って日本に入り、仕事で使ってまた持ち出したい。どう申告すればいい?』という相談です。
こうした職業用具は、ATAカルネで使える物品の代表例です。
持ち込む国(この場合は日本)と出す国がATA条約の加盟国なら、カルネを使った免税扱いの通関を検討できます。
カルネが無い場合の扱いは金額や使い方で変わるので、到着する空港の税関に事前に相談しておきましょう。
- 持ち込む道具の品名、型番、数量
- 日本で使う期間と、持ち出す予定の日
- 日本で売ったり譲ったりしないこと
- カルネを使うか、使わないか
この4つがまとまっていれば、税関に相談する時も話が早く進みます。
相談2:カルネを使わずに入ったら付加価値税も払うことになった
『カルネを使わずにインボイスを見せて申告したら、関税だけでなく付加価値税も払うことになった』という相談もあります。
カルネを使わない場合は、その国の通常の輸入として扱われるのが基本です。
一時的に持ち込むだけの物なら、カルネの免税扱いが使えたかもしれないケースです。
次回からは、出発前に「この物と行き先でカルネが使えるか」を発給機関に確かめておくと安心です。
例えばこんなふうに聞いてみるとスムーズです。
「来月、展示会の出品物を持って行きます。行き先の国と、この品目でカルネは使えますか?」
相談3:自分のバイクを海外に持ち込んで走りたい
『自分のバイクを海外に送ってツーリングしたい。カルネで通関できる?』という相談も多く見かけます。
ATAカルネで使える物品は、行き先の国によって全部が認められるとは限りません。
乗り物は、通関のほかに現地の登録や運転のルールも関わってきます。
行き先の国の公的機関や、輸送を頼む事業者に早めに確かめてみてください。
通関の仕事に興味がある方へ
カルネのように、国ごとの決まりと書類をつなぐ仕事に面白さを感じた方もいるかもしれません。
通関の知識を仕事にしたい人には、国家資格の通関士という道もあります。
ATA条約の実施に伴う特例法は、通関士試験の出題範囲にも入っています。
どんな資格かは通関士とは?仕事内容と国家資格としての役割で紹介しています。
通関ドットコム
通関士を目指すなら、講座を比べてみませんか
実務の申告書問題や計算問題の解説、法改正への対応など、独学では用意しにくい部分だけでも講座を使うと準備が進めやすくなります。学び方の比べ方と、資料請求で講座を選ぶ時のチェックポイントをまとめました。
講座の選び方通関士の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。講座の内容・料金・受講期間は各講座の公式案内でご確認ください。

よくある質問
ATAカルネとは何ですか?
ATA条約に基づく国際的な制度の通関用書類です。外国の税関でその都度通関書類を作らなくても、免税扱いで輸出入の通関手続を簡単で速く進められます。
カルネ通関で輸出する時は、何に使えますか?
主に商品見本、職業用具、展示用物品です。ただし、持ち込む国によって全部が認められるとは限りません。
ATAカルネの有効期間はどのくらいですか?
有効期間は1年以内です。外国に持ち込んだ物は、その有効期間内に持ち出す義務があります。
ATAカルネはどこで発給してもらえますか?
税関の案内では、一般社団法人「日本商事仲裁協会」が発給を行っています。申込みの方法は発給機関に確かめてみてください。
展示会で売る予定の物にもカルネは使えますか?
カルネは一時的に持ち込んで持ち出す物のための制度です。売る予定の物は、通常の輸出入の手続で考えておきましょう。
まとめ
- ATAカルネはATA条約に基づく通関用の手帳で、免税扱いで輸出入の通関を簡単にする
- 使える物は主に商品見本、職業用具、展示用物品で、行き先の国による違いがある
- 行き先がATA条約の加盟国であること、有効期間1年以内であることが条件
- 物の種類、期間、持ち帰るかの3つでカルネか通常の手続かを決める
- 日本での発給は一般社団法人「日本商事仲裁協会」





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