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輸入の件数が増えてきて、『通関を社内でできたら早いし、仕組みも分かるのに』と考え始めた担当者の方もいるはずです。
結論から言うと、自社の貨物を自社で申告すること自体はできます。これが一般に「自社通関」と呼ばれるものです。
ただ、準備と責任の重さは通関業者に頼む時とまったく違います。この記事では、その違いと始める前の準備をお話しします。
自社通関とは?自社の貨物を自社で申告すること
自社通関とは、自社が輸入や輸出をする貨物について、通関業者に頼まずに自社で税関へ申告することです。
法律上の決まった言葉ではありませんが、現場ではこう呼ばれています。
税関の案内では、輸入申告は貨物を輸入しようとする者が行うことになっていて、通関業者に代理や代行を頼むこともできると説明されています(カスタムスアンサー1101)。
つまり、自分で申告するのが本来の形で、通関業者に頼むのはそれを任せる形なんです。
通関業の許可は要らないの?
『通関って、許可を受けた会社しかできないんじゃないの?』と思う方も多いですよね。
通関業の許可が要るのは、他人の依頼を受けて、税関への申告などを代わりに行うことを業とする場合です(カスタムスアンサー9103)。
自社の貨物を自社で申告するのは、人から頼まれた仕事ではありません。ですから、通関業の許可の話とは別なんです。
グループ会社や取引先の貨物までまとめて申告しようとすると、「他人の依頼」にあたるかどうかが問題になります。
自社以外の貨物を扱う予定があるなら、始める前に税関に相談しておきましょう。
自社で申告する場合と通関業者に頼む場合の違い
自社通関は、状況を社内で把握しやすい代わりに、知識と体制と申告の責任をすべて社内で持つことになります。
件数、品目の数、社内の人手で向き不向きが分かれます。
違いを「準備」「責任」「手間」「向いている会社」の4つで比べてみます。
| 比べる点 | 自社で申告する | 通関業者に頼む |
|---|---|---|
| 準備 | 申告の知識を持つ人、申告の仕組み、社内のルールづくりが要る | 書類をそろえて渡せば始められる |
| 責任 | 申告の内容に自社が直接責任を持つ | 申告の名義は自社でも、書類の作成と審査を任せられる |
| 手間 | 申告書の作成、税関とのやり取り、検査の立会いを社内で行う | 連絡と書類の受け渡しが中心になる |
| 状況の把握 | どこで止まっているかを社内ですぐ確かめられる | 通関業者を通して確かめる |
| 向いている会社 | 同じ品目を継続的に多く扱い、社内に担当者を置ける | 件数が少ない、品目が多様、他法令の手続が多い |

『件数が多いなら自社でやった方が得なのでは』と感じるかもしれません。
ただ、人を育てる時間や、申告を間違えた時の対応まで含めて考える必要があります。費用の内訳を比べる時は通関費用の内訳も参考にしてみてください。
品目ごとに分けて考える
自社通関か、通関業者への依頼かは、会社全体で一つに決める必要はありません。
品目の性格ごとに分けると、無理のない形が見えてきます。
| 品目の性格 | 自社で申告しやすさ | 考え方の例 |
|---|---|---|
| 同じ品目を毎月くり返し輸入する | しやすい | 税率の分類が固まれば社内で回しやすい |
| 品目が毎回変わる | しにくい | 分類の判断が毎回要るので頼む方が楽 |
| 食品など他法令の届出が要る | 慣れが要る | 届出まで任せられる通関業者が心強い |
| 原産地証明でEPA税率を使う | 慣れが要る | 証明書類の扱いに慣れてから広げる |
例えば、社内ではこんな会話から始めるとスムーズです。
「毎月入ってくるこの部品だけ、来期から自社で申告してみませんか」
「分類はもう決まっているので、まずはそこから試してみましょう」
通関業者に頼むと何が任せられる?
通関業者は、申告の代理だけでなく、通関書類の作成や、他法令の許可や承認の申請などの関連業務も受け持ちます(カスタムスアンサー9105)。
通関業者の書類は通関士が審査して記名します。依頼する前の確認は通関業者の役割と依頼する前に確かめることで詳しくまとめています。
自社通関を始める前に準備すること
自社通関を始めるなら、申告に必要な書類と項目をそろえる流れ、申告の仕組み、社内で判断できる人の3つを先に整えます。
いきなり全部を自社に切り替えるより、少しずつ広げる方が安心です。
申告に必要な書類と項目
輸入の申告では、仕入書(インボイス)、包装明細書、船荷証券や航空貨物運送状などをそろえます(カスタムスアンサー1107)。
貨物によっては、他法令の許可や承認の書類、原産地証明書なども必要です。
申告する項目には、品名、数量、価格、原産地などのほか、令和7年10月12日からは国内の運送先や通信販売の貨物にあたるかどうかも加わっています(カスタムスアンサー1106)。
申告の流れ全体は、輸入通関の流れで手順ごとに説明しています。
申告の仕組みとNACCS
通関の電子申告には、NACCSという仕組みが使われています。
NACCSの業務の一覧には、輸入申告事項の登録や輸入申告といった業務があります(NACCSセンター 業務一覧)。
自社で使う場合の利用の手続は、NACCSセンターの案内で確かめてみてください。仕組みの全体はNACCSとはでまとめています。
- 扱う品目と年間の件数を洗い出す
- 品目ごとの税率の分類と、他法令の要否を確かめる
- 申告の担当者と、確認する人を決める
- 申告の仕組みを整え、税関に進め方を相談する
- 品目を絞って始め、慣れてから広げる
税関の審査や検査にも自社で向き合う
自社で申告すると、税関の書類審査や検査にも自社で対応することになります。
税関長が指定した場所での検査なら税関に納める手数料はありませんが、検査のための運送や開梱、詰め直しの費用は輸入者などの負担です(カスタムスアンサー1112)。
貨物が着く前に書類を出して審査や検査の扱いを先に知れる予備審査制は、全ての輸入貨物が対象です(カスタムスアンサー1108)。
社内で書類を早くそろえられるなら、こうした仕組みも活かしやすくなります。
輸出を自社で申告する場合
輸出の申告では、輸出申告書と仕入書(または仕入書に代わる書類)などをそろえます(カスタムスアンサー5009)。
輸出の許可は、原則として貨物を保税地域に入れた後に受けます。消費税の輸出免税を受けるには、輸出許可書などを7年間保存する必要があります(国税庁タックスアンサーNo.6551)。
社内で判断できる人を置く
自社通関で一番大事なのは、申告の内容を判断できる人が社内にいることです。
税率の分類や課税価格の計算を間違えると、後から直す手続が必要になります。
- 品目ごとの税率の分類を説明できる人がいるか
- 課税価格に運賃や保険料を加える計算ができるか
- 他法令の届出や許可の要否を調べられるか
- 申告を間違えた時に、誰が税関に相談するか決まっているか
- 担当者が休んだ時の代わりがいるか
輸入者として手続を簡単にしたい場合は、AEOの特例輸入者という制度もあります。輸入申告と納税申告を分けて、納税申告の前に貨物を引き取れる仕組みなどがあります(カスタムスアンサー1901)。
担当者として知識を深めたいなら
自社通関の担当になると、通関の知識を体系的に身につけたくなる方も多いです。
その目標として、国家資格の通関士を目指す人もいます。
独学で進めるか、講座を使うかは人それぞれです。過去問と市販の問題集でコツコツ進められるなら、独学でも始められます。
一方で、申告書の問題や計算問題の解説がほしい、仕事が忙しくて勉強時間が限られる、質問できる相手がいない、という人には講座が役立つ場面があります。講座の選び方や独学の進め方を見比べてみてください。
通関ドットコム
通関士を目指すなら、講座を比べてみませんか
実務の申告書問題や計算問題の解説、法改正への対応など、独学では用意しにくい部分だけでも講座を使うと準備が進めやすくなります。学び方の比べ方と、資料請求で講座を選ぶ時のチェックポイントをまとめました。
講座の選び方通関士の講座の選び方を見る当サイト内の解説ページに移動します。講座の内容・料金・受講期間は各講座の公式案内でご確認ください。
自社通関のよくある相談
自社通関の相談は、「通関士は要るのか」「申告した後に間違いに気づいたら」の2つに集まりやすいです。
Yahoo!知恵袋でよく見られている相談を要約して、答えていきます。
『メーカーが自社通関するなら、通関士の資格は必要?』
通関業法で営業所ごとに通関士を置くとされているのは、通関業者です。
自社の貨物を自社で申告するのは通関業にあたらないので、この決まりの対象ではありません。
ただ、申告の中身を判断できる知識は要ります。資格の有無にかかわらず、社内で誰が判断するかは決めておきましょう。
『輸入の許可を受けた後に、数量が多かったと分かった』
申告した内容と実際の貨物が違っていたら、そのままにせず、申告した税関に早めに相談するのが基本です。
後から申告を直す手続の考え方は、輸入申告を間違えたらで説明しています。
『港に着いた荷物を自社の倉庫に運んで売っている。自分で通関できる?』
自社が輸入者として申告するなら、自社通関の形をとることはできます。
ただ、船便の貨物は保税地域での手続や保管の段取りも関わります。最初は通関業者に頼みながら流れを覚え、品目を絞って自社に切り替える方法が現実的です。

よくある質問
自社通関に通関業の許可は要りますか?
自社の貨物を自社で申告するだけなら、通関業の許可の対象ではありません。他社の貨物まで扱う予定がある時は、税関に相談してみてください。
輸出も自社通関できますか?
輸出の申告も、輸出しようとする者が行うことができます。保税地域への搬入の段取りも含めて準備しておきましょう。
自社通関にすると通関費用は下がりますか?
通関業者への料金はかからなくなりますが、担当者の人件費や申告の仕組みを整える手間が増えます。関税や消費税は誰が申告しても同じなので、料金と社内の手間を並べて比べてみてください。
税率の分類に自信がない時はどうすればいいですか?
税関の事前教示の制度で分類を確かめておく方法があります。カスタムスアンサーで制度の案内を見て、迷う品目は税関に相談してみてください。
自社通関と通関業者への依頼を併用できますか?
できます。慣れた品目だけ自社で申告し、他法令の手続が多い品目は通関業者に頼むといった分け方もあります。
まとめ
- 自社通関とは、自社の貨物を自社で税関に申告すること
- 通関業の許可が要るのは、他人の依頼を受けて業として行う場合
- 自社通関は状況を把握しやすい代わりに、知識と体制と責任を社内で持つ
- 書類と申告項目、申告の仕組み、判断できる人の3つを先に整える
まずは扱う品目と件数を書き出して、自社で申告する品目と頼む品目を分けてみてください。通関の全体の流れは通関とはでまとめています。





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